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メンタルヘルス用語辞典>自殺

2005年11月02日

 自殺について


1.どれくらい多いか、何が原因か


 わが国における自殺者総数は1998年以来3万人超が続いており、これは交通事故死者の3倍以上になります。
40歳代以上の中高年期層が多いです。
 自殺時、冷静な判断に基づいて確信的に自殺した人はせいぜい2割程度で、8割以上の者は自殺時に何らかの精神障害をきたしていたことがいくつもの調査で明らかになりましたが、そのうち精神科に受診、治療を受けていた人はわずかです。
 また、よく「『死ぬ、死ぬ』という人に限って死なない」などといわれますが、これは全くの間違いであり、自殺しようとする人は最後のSOSとして「死にたい」とはっきり言ったり、暗にほのめかすことが圧倒的に多いのです。


2.どんな人が自殺するのか――危険因子


(1)40代以上の中高齢者。性別では男性が多い。
(2)以下の精神障害にかかっている:うつ病、統合失調症、アルコール依存症。
(3)孤立:家族や友人との交流がない(私的生活での孤立)、失業・異動・同僚と疎遠(社会的生活での孤立)
(4)自殺の既往歴がある:自殺未遂者の10人に1人は将来既遂するといわれています。
(5)自殺の家族歴がある
(6)自殺願望を表現・肯定した
(7)愛情薄い生育歴:親との死別や離別、児童虐待の中で育つと自己価値観が低くなりやすく、辛い中でも希望を見出し頑張って生きようとする動機が生じにくい。
(8)重い身体疾患にかかっている、特に痛みや行動制限など苦痛が大きく、進行性、致死的であるもの。
(9)性格因子:衝動的、依存的、過度に脅迫的、など。


3.自殺願望を打ち明けられたときの対応法――すべきこととタブー


 「自殺したい」と打ち明けるのは、死ぬ前の最後のSOS信号であり、「もしかしたらこの人ならわかってくれるかも、支えてくれるかも」との気持ちで、絶望的な心境を話します。
 たとえ一見とっさに選ばれたように見えたとしても、半ば無意識的に相手を選んだのであり、誰でもよいから話したかったわけではありません。
  この時に聞き手が(自分の)不安に耐えて話し手の気持ちを受け止めてあげられるかどうかが、自殺予防の成否に関わるのです。


してはいけないこと


・話題をそらす
・常識的な一般論でさとす・・・「命を粗末にしてはいけない」「家族が悲しむだろう」等。
・叱咤激励する・・・「死ぬ気で頑張れば何だってできるはずだ」「もっと悲惨な状況の人だって頑張っているのに、そんな弱気でどうする」等。
・容易に解決策を示す


 聞き手自身に湧き上がる不安から、ともすると一方的に話し、相手を思いとどまらせよう、説得しようとしたくなりがちですが、これはタブーです。
 こうした対応をすると話し手は「自分の辛さをわかってもらえなかった、無駄だった」心を閉ざし、黙って自殺を決行してしまう危険性が増します。


するべきこと


・真剣に耳を傾ける
・感情を理解、受け止める
・充分に時間をかけて話を聴いた後、他の選択肢を示す


 充分時間をかけて、相手の話を聴く。これが最も重要です。
 自殺をするという事の是非ではなく、自殺に追い込まれるほど辛い気持ちなのだ、ということを受け止めてあげることがポイントです。


4.残された人の反応


 それでも自殺が起きてしまった時、残された人に起こる心理的反応を予め知っておくことは、病的な死別反応(うつ病、不安障害)を起こさないために大事なことです。
身近な人が自殺した時、以下のような気持ちが残された人達の心の中に生じ得ます。


・茫然自失、驚愕、疑問
・否認(その人の死を認めたくないという気持ち)
・怒り
・自責感、抑うつ
・他罰、「犯人」探し


 特に故人に対する「自分だけ逃げて卑怯だ、私をを見捨てた」という怒りと、それを自覚して「何て私は無慈悲なんだろう」と思ったり、「最後に会った時にあんな言い方をしなければ・・・もっとちゃんと話を聞いてあげていれば・・・」と罪悪感を感じたりすることもよくあります。


 そういった、故人に対する複雑な気持ちを無理に抑えつけたり気を紛らわしたりせず、1人になれる時間を作って、存分に泣き、怒りましょう。
 親しい友人や家族に気持ちを聞いてもらったり、日記やエッセイなど文章にして自分の思いを気が済むまで書くのも有効です。


書いた人 浜野ゆり : 2005年11月02日 17:48

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