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催眠療法で妊娠?

2007年06月04日

アメリカに"Psychology Today"(サイコロジー・トゥデイ)という月刊誌があります。

一般向けの心理学雑誌なのですが、「ファッションから旅行、ダイエットまで何でもかんでも"○○心理学"とネーミングして記事にする」というのではなく、かなりきちんとした学問的バックグランドがあり、しかもその時期の最先端のニュースも取り入れながらの特集やコラムも多く、刺激的です。
一昨年の例では脳内に発見された「ミラー(鏡)細胞」と自閉症やADHDの関係など、国内では一般向けには日経新聞くらいにしか載っていなかったと記憶しています。
私は相棒にこれを紹介されたのですが、フランスの" PSYCHOLOGIES MAGAZINE"誌と並んでそのレベルの高さに感心したものです。


さてその中のトピックスを短く紹介したコーナー(2006年10月号)で
「不妊症の治療で催眠を併用した人は、併用しなかった人よりも妊娠率が高い」というものがあり、驚きました。
曰く「最近の研究によると、予め催眠を受けた女性は、受けなかった人に比べて体外受精での妊娠率が2倍近くになった」とのこと。


「えー、まさか『あなたは妊娠する~』と暗示して妊娠した、というのじゃないだろうな」と、眉に唾をつける思いで記事を読んでいくと、
実際の暗示内容には触れていませんでしたが、妊娠率上昇の理由として
「催眠によりストレスを減らすことで母体がリラックスし、子宮(の粘膜)が受精卵を着床させやすくするのかもしれない」
とあり、まあそれならありうるな、と納得したのでした。


そういえば医学生時代の産婦人科の臨床講義で、先輩医師が次のように話していたことを思い出します。
「受精卵は(半分父親の遺伝子なので)母体にとっては『異物』である。
この異物=異種タンパクに対する拒絶反応を起こそうとする母体の免疫系と、着床を成功させようとする生殖システムのせめぎ合いが、子宮の粘膜で刻々と起こっている様子が、顕微鏡写真でもありありと見えるのだ。
普通は、何とかぎりぎりのところで母親の子宮粘膜につながるが、免疫系が勝ると受精卵は拒絶され、流産となる。」


「個体」を守るためには異物を排除しなくてはならないが、「種」の保存のためには受精卵を受け入れなくてはならない…というわけで、母親の細胞レベルでの「葛藤」があるのですね。
それゆえ、催眠で母体をリラックスさせることにより、異物に対する「寛容度」を増すことができ、妊娠率も上がる、と考えることができるわけです。

書いた人 浜野ゆり : 2007年06月04日 07:14