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連れて行く人

2007年06月19日

国鉄から今年で20周年を迎えたJRをはじめ、鉄道・郵便業務・病院経営等々、最近経営の合理化を求めて民営化される動きが加速していますね。


採算を度外視しても残さなくてはならない業務というのは確かにあり、そうした公共性の高いものはやはり国公立の、安定した継続性が必要です。
一方民間企業では、どんなに貴重な内容でも採算が合わなければ直ちに廃止という、刹那的な視点になりがちな一方、利益が上がるなら前例がなかろうが突飛な案に見えようが、どんどん変化を受け入れ向上していこうという柔軟性、顧客のニーズにフィットするために献身的に相手に尽くす姿勢というものがあり、しばしば時代をリードするようなサービスを生み出します。


基準に満たないスタッフ数なのに不正に介護業務を申請してした「コムスン」も、むろん不正そのものは許されるものではないですが、その目玉サービス「24時間対応介護」「どんな依頼も断らない方針」は突出しており、最後の砦としてこの会社を利用していた人たちも多いと聞きます。
特に地方では上記のサービスを提供できる会社が他にほとんどなく、コムスンの処分と業務廃止後、そうした患者さんの受け皿が不明なまま。
それだけ、大変な内容の仕事なのですね。


精神科の世界で最も緊急度が高く、時間・労力・人手が必要で時には危険も伴うのが、精神疾患の症状のために自傷他害を起こす危険の高い人を強制的に入院させることです。
具体的には主として統合失調症の患者さんが幻聴や被害妄想のため「周りの皆は自分を殺そうとしている!」と確信し、恐怖のあまり自殺しようとしたり「やられる前にやらねば」と、"敵"と思い込んだ人を襲ったりするパターンです。


以前は精神科病棟のある病院の医師が家族の要請に応じて自宅に往診し、必要な場合には強制的に病院へ連れて帰ることもありましたが、最近はなかなかそこまでする精神科医は減っているでしょう。
あとは家族や通行人による警察通報からの強制入院ですが、本人の意思に反して強制できるのはよほどの場合のみなので、めったには実行されません。


そんな「ニーズの隙間」を仕事の場に据えたあるサービスを、先日ネットでたまたま見つけました。
全国メンタルケアセンターという会社が提供しているものです。


要するに「幻覚妄想で興奮しているが、それが病気の症状ではなく現実のことと思っているので受診や入院に全く同意しない」という状態にある患者さんを、家族と共に精神科病院に連れて行ってくれるものです。


ただし本人の同意なしに身体拘束・強制連行するのは「刑法の逮捕監禁罪に抵触する恐れがあるため」強制はせず、あくまでも「説得する」というスタイルです。
なぜなら本人の意思に反しての拘束・強制は、警察官や(精神科の診察での)精神保健指定医のみに許されている行為だからです。
あくまでも「説得」するという立場のため、非常に気長に、手を替え品を替え、おそらく時には持久戦で、患者さんが根負けするまで話しかけ、ふと気を許した瞬間をつかんで、受診のきっかけにするのでしょう。
これは、大変な根気と労力を使う仕事です。


というわけで、この会社のサービスは親身そうだけど、ものすごく高価!
予想以上でした。
何しろ、東京都内でも1件80数万円から、とのことですので。
よほど大金持ちならともかく、ほとんどの人はギリギリまで利用は難しそうです。
それでも万一の場合には、選択肢の1つとして知っておくと良いのかもしれません。

書いた人 浜野ゆり : 2007年06月19日 22:57