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機嫌の保ち方(3)

2008年02月02日

嫌なことが起こった時の心理的対処法その2、「嫌な出来事をできるだけ嫌じゃないものと感じる」。
そんなことができるのでしょうか?


うつ病の代表的な心理療法の一つ「認知療法」では、次のような大前提があります。
「人の気分(感情状態)は外界でのできごとそのものではなく、それを本人がどう受け取るかによって決まる」。
物事の受け取り方(解釈の仕方)を「認知」と呼びます。
同じような出来事があっても、その受け取り方で本人のストレスは大きく変わってくるのです。


例えば前回の記事に書いた例、「出かけようとして家を出たところで、ジャケットのボタンが取れて落ちてしまった」という状況を考えてみましょう。


①この急いでいる時に取れるなんて、なんてついてないの!
②出掛けにボタンが取れるなんて不吉だ。今日の会議(あるいは、デート)は、上手くいなないのでは…。


多くの人は、このように考えがちです。
特にうつになりやすい人の場合、①に続いてすぐ「そういえば以前にもあんなことやこんな不運があった…いつも私はついていない。私の人生、今後もはろくなことがないに違いない。自分なんて生きている価値もない」という考えまで引き続いて湧き起こってくることが多いのです。
単にボタンが取れたという現象が、①②のように考えてしまったために何倍もまがまがしい、とんでもなく大きな不運のように感じられ、当分の間、気分が落ち込んでしまいます。


これに対して


③あらっ、ボタンが取れてしまった!でも家の前で良かった、だって駅や大勢の人中だったら落としたことにも気づかず、ボタンをつけるために同じようなものを買いに行かなくてはならなかったし、取れたことに早く気づけたおかげで(安全ピンなどで)応急処置をしておける、だから会議で(デートで)だらしなく取れたままの格好を相手に見せずに済む。ああ、良かった!


と考えたならどうでしょう?
同じ状況でもぐっと気分が明るくなりますね。
それどころか、「自分は幸運だ!」と感じられ、そうするとその後の自分の言動もポジティブな雰囲気になるので、現実の環境(対人関係をはじめとして)も良い展開になりやすいのです。


「その状況のプラス因子に注目する」というこの手法は、これまでに多くの賢人たちが勧めてきた方法です。
何年間も納税額日本一を達成した斉藤一人氏がよく「とにかく、何事につけ『自分はついている』と言いなさい」と教えているのもそうですし、
様々な宗教で「感謝しなさい」と教えているのもそのためです。


すなわち、感謝するには、自分が普段からいかに恵まれているか、幸運であるかを再認識する必要がありますし、自分の幸運を認識し感謝することで、自分自身の気持ちが更に明るくなり、満たされ、柔らかくほぐれていくのを実感できるのです。
つまり感謝するのは、究極的には、自分のためなのです。
だから「道徳としてするべきだから」ではなく、幸せになるためにまず自分から感謝しましょう。そのネタを見つける練習をしましょう。
実は「幸福」になるためには「幸福を感じる練習」が、必要なのです。

書いた人 浜野ゆり : 2008年02月02日 06:42

この記事へのコメント

おお母さん
書き込みを真にありがとうございます。
実際にこのスキルを習得されたことでご家族の健康が改善された方からのご報告をいただけた上にこのような温かなコメントをいただけて非常に嬉しく、また心強く感じました。
私の受け持ち患者さんで統合失調症の方にも何人か、外来で連続的なカウンセリングを行なってきた人たちがおられます。
彼らは対人関係に特にデリケートで、自分を責めがちな傾向がありますが、自信がついてくるとそのデリカシーや気遣いが他の人たちへの配慮になっていくので、社交的ではなくても周りから愛され大事にされる、ということをよく聞きます。
息子さんがご自身の特性を上手く生かして、楽しみながら暮らしていけますよう、お祈りしています。

書いた人 ゆり : 2008年02月04日 05:01

はじめまして。

東京メディカルケアセンターにお世話になっている者の母です。

まさに浜野先生の述べているこのプラス思考と感謝で(地元で受けているカウンセラーで)統合失調症の息子はずいぶん良くなりました。

人には心の持ち方の癖がある。無理をしてでも笑いなさい。
いい心の持ち方を癖にしなさい。毎日毎日心にたたきこまれました。
そしてその心の持ち方ができるようになったころから息子はずいぶんいい笑顔が見えるようになりました。

今までなかなかこんな適切な心の指導をブログでは拝見できませんでしたので嬉しい気持ちでいっぱいです。

ぜひ全国の皆様に伝え続けていってください。
私もこれから先生のブログ毎日拝見させていただきます。
ありがとうございました。

書いた人 おお母 : 2008年02月03日 00:22