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社会不安障害というもの

2008年08月06日


(写真をクリックすると拡大されます)


社会不安障害というものがあります。
分類としては神経症圏で、他人との対話をはじめとする交流への不安が強いタイプのものです。
特に職場の同僚や近隣の人など、「顔見知りだが親しくはない」間柄の人たちに対しての不安・恐怖感が強く、このため社会的活動に支障をもたらすようになります。


誰でも、必ずしも自分を受け入れられていない、心許せていない人たちの集団を前に注目されたり、意見を求められたりしなくてはならない場面では、多少とも緊張するものです。
また、ある程度の時間を共有しながらの会食で、いわゆる世間話をするのが苦手、何を話したら良いのかわからなくて…という人も少なくないでしょう。
しかしそれが極度に強くなり、言動がまとまらなくなったり、その場面を考えただけで動悸や冷や汗が出たり不安や不眠で生活もおぼつかなくなってくると、これは治療を要する状態と考えられることになります。


従来はこの症状を持つ人へは定期的な心理療法がメインであり、今もそれは有効な治療法の1つとして続いていますが、最近は抗うつ薬、特にSSRIがこの障害に投与されることが増え、それなりに効果を挙げています。


上記の写真は、ある製薬会社が社会不安障害への新しい薬を開発するにあたっての治験者を募る広告チラシの一部です。
どんな状況がこの症状を持つ人たちに苦痛かのリストが書かれているだけでなく、この写真そのものが、「人々から自分へ向けられた嫌な視線」(実際以上に本人が自分を悪く思われていると感じがちなのがこの障害の特徴なのですが)を非常にわかりやすく表現しており、印象に残ったのでした。


ところで「社会不安障害」という単語は、その意味がわかったようなわからないような、曖昧な言葉です。
今年の日本精神神経学会において、この病名は「社交不安障害」という形に改めようという動きがあったそうですが、この方が原語(social anxiety disorder)のニュアンスに近いし、患者が社交、つまり人づき合いが苦痛なのだというのがよくわかるので、良いことだと思います。

書いた人 浜野ゆり : 2008年08月06日 06:39