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(4)考え方で自分を追い込む人

2009年07月20日

2.正しいスキル(技術)を毎日練習し続ける(実習)


よく、不安や落ち込みが強まったという患者さんに「その時何を考えていましたか?」と訊くと、一瞬考えた後「いや、特に何も考えていませんでした。特別なできごともなかったし」という答えになることが少なくありません。
しかし「何も考えていなかった」「ボーッとしていた」という場合のほとんどは、実際にはあれこれ際限なく様々なことを考えています。
しかも、その自覚がないことがほとんど。
それが人間というもので、ちょっとした出来事やふとしたきっかけで考えの連想は際限なくあちこち飛び、その結果数分前にはそもそも何を考え始めていたのかも忘却してしまいます。


上記のように落ち込みや不安が強まった際に考えていたことも、実際にその前後数日の出来事、行動、他の人とのやりとりなどを具体的に追っていくことで「そういえば、あのときこんなことがあって…」と、ネガティブ思考に入ってしまったきっかけが特定できることが多いのです。


人は自分の特定の考えを除去することはできません。
無理やり押さえ込んでもその考えや、考えに伴なう感情(多くは不安、憂うつ、怒り)は一時的に表面から目立たなくなっただけで存在はしていますから、ふとしたきっかけでまた表面化します。


しかし心の特性として


(1)より納得できる考え方に出会えれば、以前の思考は置き換わる

(2)その思考や感情を敵視して取り除こうとするのではなく、その存在を認めた上で上手く折り合う


のどちらかは可能であり、(1)は認知療法で、(2)はマインドフルネス認知療法(MBCT)で会得できます。


そしてここから先の「実習」は、それぞれの治療法の中で練習し身につけていってもらうしかないものです。
残念ながら日本では認知療法もMBCTも、きちんとできるセラピストがほとんどいないので、これらを身につけたい方はまず書籍で学び、自分なりに日々実践していってもらうしかありません。


「お勧め本棚」の書籍を参考にしていただければと思います。
ちなみに認知療法については「精神医学・心理学」、MBCTについては「代替療法」のカテゴリーにありますが、MBCTは邦訳本がまだありません。
最も近いエッセンスと実践法を伝えているのが『なまけ者の3分間瞑想法』なので、まずこちらから学びはじめることをお勧めします。


瞑想は決して特殊な体験ではなく、人間の心に本来備わっている意識状態であること、それを日々の普通の生活に無理なく取り入れられること、それによって特別な道具も場所も選ばずに非常に有効なストレス解消法になること、そのような能力を人は誰でも持っていることが、よくわかる一冊です。

書いた人 浜野ゆり : 2009年07月20日 20:46