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不眠の行動療法(2)

2012年04月26日

『自分でできる「不眠」克服ワークブック――短期睡眠行動療法自習帳』
渡辺範雄、創元社


これは8週間、自分で睡眠に関しての生活パターンを変えることで、徐々に睡眠を改善するというもの。


はじめに「睡眠環境チェックリスト」「健康な睡眠のための10か条」というのがあり、これを理解し日々覚えておくだけでも、軽度な不眠の人なら改善が期待できそうです。


例えば「夜よく眠るために運動するべき」「睡眠不足は週末等に寝だめする」ことで不眠のつらさを緩和しようとする人は多いでしょうが、ではいつどのくらい運動するのが適切か、逆に運動をしてはいけない時間帯は?といった点についてはよく知らない人が多いでしょう。
また、寝溜めや昼寝でとりあえずの睡眠不足による辛さは解消されても、次の就寝時になっても眠れない・・・と、遅寝遅起きがどんどん進んでいくことは、経験された人も多いでしょう。


本書で勧めているのは「睡眠制限法」および「刺激コントロール法」というのもで、ニューヨークの睡眠障害医学研究センターの心理学者、スピールマンが提案した睡眠制限療法をもとに、より簡便化し、患者さんが自身でも実施できるようにしたものです。

そこでのポイントの代表的なものは


・本当に眠くなった時点まではベッドに入らない。つまり寝床でただ横になったり、テレビを見たり読書したりなど、睡眠以外の行動をしない。


・寝付けなかったら、短時(15分程度で)起床し、簡単な作業や読書等をする。
(この時してはいけない活動もいくつかあるので要チェックです)


・時計を見ない。時間を確認したところで、イライラや「このまま眠れなかったら、明日の仕事が辛くなる」などのネガティブな思考が活発化するだけで、百害あって利益なしだから。


・寝床のなかで考え事をしない。
 代表的なことは「昼間のことを思い出す」「何か問題を解決しようとする」「計画を立てる」。
 思考も頭の中の「行動」だからです。


特に「寝床の中で考え事をしない」のは、最初は至難の業に感じられるかもしれません。
目の前のいろいろ溜まっている作業をしている時でさえ、心配性の人は他のことをあれこれ考えてしまうのに、体をじっと横たえると、この時とばかりにああでもないこうでもないと考えてしまうのが、それこそ習慣になっているからです。


しかし不眠を克服したいと思うなら、こうした有害な習慣を手放す毎日の訓練が必要です。
それには繰り返しての練習しか、上達の道はありません。
最近は何でも「即座に簡単に、劇的効果!!」とうたうものばかり注目されますが、本当に重要なことは根も深い分、ある程度の時間と労力はかかるのが当然です。


この行動療法もまずは8週間の真摯な実践が必要ですが、不眠に悩む人のほとんどは8週間どころか、何か月、何年も悩んで来られたのではないでしょうか?


本書の冒頭に、「(この)治療法はすごく簡単だといいうわけではありませんが、なによりも『治療意欲』が大切です。この本を手に取っていただいた時点で、もうすでにあなたは、良くなっていくための大きな一歩を踏み出したことになります」とあるように、本気で睡眠を改善したいと思い、そのための時間と労力を投資しようと決心できたら、不眠克服の最初の半分は達成できたようなものとさえ、いえるでしょう。
望む状態を手に入れるため、ぜひ行動してみてください。

書いた人 浜野ゆり : 2012年04月26日 07:31