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メンタルヘルス用語辞典 > 統合失調症(精神分裂病)

2005年11月02日

1.統合失調症とは


 代表的精神疾患の1つで、人口の0.8%に発病しますので、決して珍しい病気ではありません。例えば電車の1車両にそこそこ満杯に乗っている時で120-130人ですが、そこに1人という割合。
  好発年齢、つまり発病率の高い年代層は10代-20代であり、したがって中学・高校・大学の学生や新入社員の集団では平均の0.8%よりも高い発病率になります。仮に1クラス40人とすると、平均2-3クラスに1人は統合失調症患者が発生してもおかしくない計算になります。


2.統合失調症の症状


 基本は「自分の心の中と外界の境界線が不明瞭になる」という体験です。このため自分の考えたことが他人に知られてしまう、他人の考えが自分に入り込んできて自分に作用する、外界で起こる物事は暗に自分にメッセージを伝えているといった妄想を抱くことが多いです。
 幻覚、特に幻聴が多く、様々な妄想を伴います。病気が進行すると思考が混乱し、支離滅裂な言動となります。強い不眠、不安を伴います。


<よくある妄想の例>


 被害関係妄想
 クラスメイトや職場の同僚、あるいは近所の人達が自分を嫌い、嫌がらせをする。自分の悪口や噂をしている。
 秘密組織が電波を飛ばして自分を操ろうとしている、自宅の壁に盗聴器をしかけて自分をスパイしている、など。


 注察妄想
 近所の人や通りすがりの人達が、それとなく自分を観察している。


 恋愛妄想
 ○○さんが自分を好いているが、はっきり告白できないので目線やしぐさ、婉曲な表現で自分に愛情を伝えようとしている。


 血統妄想
 自分は天皇の末裔である、という古典的血統妄想は「天皇」の特別性がかつてほどでなくなった現在は減り、代わりに「世界的アーティスト○○の隠し子である」「キムタクの親友である」など、時のスターを妄想の対象とすることが多い。


3.統合失調症の発病の原因


 原因は解明しきれていませんが、他の多くの病気と同様、基本的には体質的なものと考えられます。高血圧や糖尿病、あるいは癌も体質・家系要因がかなり絡むのと同じ意味合いで、統合失調症も家族性があります。単一遺伝子によるものではなく、複数のいわば「可能性遺伝子」が重なった人に発病しますので、これまで全く統合失調症の発症しなかった家系よりは、複数の発病者がいた家系に生まれた人の方が、ある程度発病のリスクは高いということになります。
 かつてまだ遺伝子研究が進んでいなかった時代は統合失調症の心因論が主題となっており、感情表現が極端で安定性のない家族の中で育つと統合失調症が発病しやすいともいわれましたが、このような家族の対人関係パターンは統合失調症に限らず全ての精神疾患の誘因になりえるストレス度の高いものといえます。
 また、10代から20代にかけては思春期から大人になっていく人生の激変期であり、対人関係の持ち方、自我の確立、親しい人達(特に親)との依存と独立の葛藤など、アイデンティティー形成をしていくために多大な負担のかかる時期であり、上記の体質因子とこのような生活環境因子の相互作用の結果、発病に至る人達が出てくると考えられます。


4.統合失調症の治療法、予後


 薬物療法が必須です。症状の激しい時期(急性期)を脱した後も、定期的通院と服薬が必要であり、社会復帰のためのリハビリが必要になることも多いです。
 ここ数十年は優秀な治療薬の開発により、9割近くの患者が寛解(完全治癒ではないが、日常生活や社会生活をある程度送れるようになること)に至ります。


5.参考図書(いずれもおすすめ本棚をご参照)


 『正体不明の声――幻覚妄想体験の治療ガイド』原田誠一、アルタ出版
 『救急精神病棟』野村進、講談社
 『統合失調症の認知行動療法』デイヴィッド・G・キングドン他、日本評論社


6.統合失調症を取り上げた映画


 「ビューティフル・マインド」  
 …プリンストン大学数学科に在籍している数学の天才ナッシュ(ラッセル・クロウ)は、念願のマサチューセッツ大の研究所で働くことに。ところが彼のもとに諜報員バーチャーがやってきて、雑誌に隠されたソ連の暗号解読を依頼する。彼は承諾するが、そのことがやがて、彼の精神を侵していくことに・・・。
 実在の数学者の伝記をもとにロン・ハワード監督が映画化、2001年度アカデミー賞受賞の作品。
 病的体験に入っていくときの一種高揚した世界観とそれに次ぐ破滅的な恐怖体験を、映画を観ている人も同時に体験し、どこまでが「正常」でどこからが「妄想」なのかわからなくなる――といった統合失調症者独特の感覚を通過します。
 患者さんの内的世界、当時の治療法の限界など、いろいろな面から考えさせられるお勧めの一作。


「シャイン」 (エッセイ「父と息子」もご参照ください)
 …オーストラリア出身のピアニスト、デビッド・ヘルフゴットの半生をモデルに、苦難を乗り越え演奏家として再起するまでを描いたドラマ。主演のジェフリー・ラッシュは、今作で1996年度主演男優賞を受賞。また、2004年1月のNHKテレビ「クローズアップ現代」でもデビッド氏の半生、日本でのピアノコンサートの様子などが紹介されました。


(7)統合失調症について考えたエッセイ


 了解不能
 妄想かシンクロか

書いた人 浜野ゆり : 2005年11月02日 15:26

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