« 悪夢対策は、栄養か心理療法か | トップページへ | ブックレビュー『精神科医はなぜ心を病むのか』 »

その人本来のよさ

2008年06月01日

ちょうど1年ほど前から、ある特定の症状を持つ神経症の患者さんを立て続けに3人受け持つことになりました。
3人ともかなり症状が強く、日常生活にも支障をきたすほど。
そこで週1回の心理カウンセリングと、一部は薬物療法も併用しながら、治療を続けてきました。


途中は山あり谷ありで、一時期はかなり調子の悪い時期もありましたが、ここ数ヶ月は3人とも徐々に落ち着き、外出も増えるなど行動の自由度が上がってきました。
精神的に余裕が出てきたために面接時の表情もやわらぎ、時には話を聞いているこちらを笑わせてくれることもあり「ああ、この人にはこんなユーモアのセンスがあったんだなあ」と気づかされます。


症状に押しつぶされそうになっていた時期には眉間にしわを寄せ、常に緊迫感を感じさせる雰囲気でした。
しかし、自分がなぜその症状に悩まされるようになったか、どのような時に症状が強まり、どのように対処すればコントロールできるようになるのかを知り、生活の中でその対処法を身につけるにつれて「自分もやればできる」「これからも大丈夫だろう」という自信と穏やかさが出てきて、柔和な言動になってきたのです。


まだ完全に「卒業」するまでにはなお数ヶ月はかかるでしょうが、今後徐々に治療の場を離れ、自分らしさを生かした生活がしていけるようになるでしょう。

こうした患者さんたちの成長を目の当たりにし、その人本来の良さを発揮していくのを見る時、「人間の可能性ってすごいなあ」と実感し、この仕事をしていて良かった、と感じます。

書いた人 浜野ゆり : 2008年06月01日 10:07