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うつからの微妙な回復過程

2009年02月09日

うつ病・うつ状態は、昔も今も多くの人が悩み、外来での相談も多いものです。
最近のうつについて「非定型うつ病」「新型うつ病」などといわれる状態が、特に30代前半以前の若い世代に増えているとは、この頃よく聞かれますが、やはり精神科治療の基本となっているのはオーソドックスなうつ病です。


私の外来にも多くのうつ病の患者さんが来られます。
治療が順調にいくと、休養と抗うつ薬の投与で1ヶ月程度でみるみる回復し勤務に戻り始める人もいる一方で、3ヶ月、6ヶ月経ってもなかなか意欲や憂うつ気分が改善せず、日常生活に支障をきたし続ける人もいます。


このような時、家族や主治医からみれば「以前よりもこの点でこのくらい改善している」とわかることも少なくないのですが、本人は苦痛が続いていると感じるばかりで、部分的な改善を認めることができない、という場合もよくあります。


また、全般的に強い憂うつ感、不安、イライラが減ってきてからもなお数ヶ月以上「なんとなくおっくう」「根気がない」「興味が持てない」といった症状が続き、このため一見普通に自宅生活ができているように見えても、仕事や家事などの義務や責任を伴なう活動がいつまでも始められない、という状態がみられることがあります。
すると「いつまでこの状態が続くのか?」「本当に良くなるのか?」といった、病期の長期化による新たな不安や焦りも出てきます。


笠原嘉著『軽症うつ病』では、こうした症状が段階的に回復することを述べた上で、それを説明する図を示しています。
これを見ると、回復過程のどこに今自分はいるのかを知ることができるので、病いを乗り越えるための励みになることでしょう。


その段階図について、本書から概要を一部説明すると以下のようになります。


←(うつが重度)--イライラーー不安ーー ゆううつーー物事に手がつかない(始められない)ーー根気がない(始めたものの、続けられない)ーー興味が持てないーー面白くないーー(うつが軽度)→


つまり、強いイライラ感や不安・憂うつ感が減ってからも、なかなか次の行動に移れない、やるべきことは山積しているのに一向に取りかかれないし始めてみてもすぐ疲れて止めてしまう、といった時期があり、その後、何とか必要最低限のことをやれるようになったが昔のような楽しみや興味は感じられない…といった段階を経て回復していく、ということです。


実際に患者さんたちを診ていると、時によって一時的に後戻りしたり、2-3の段階を少しずつ混合した時期も見られるなど多少ともイレギュラーな部分はありますが、確かにこういうプロセスを経ていくことは感じます。


そして最後の「面白い」という感覚の中にもいくつか細分化して示している点も興味深く、参考になるのではと思いますので、ご紹介します。


(1)テレビの娯楽番組を受身的に楽しむ段階
(2)新聞を積極的に読む段階
(3)本業のことに多少関心が出る段階
(4)本業への面白さが回復する段階


こうした段階を知っておくことで、自分の状態をモニターする目安になるのではないでしょうか。


書いた人 浜野ゆり : 2009年02月09日 06:32