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(2)考え方で自分を追い込む人

2009年07月04日

前回の続きです。


自動思考は今後も様々な例で述べようと思いますので、今回はこの患者さんの「現在に生きていない」考え方についてご紹介します。


Xさんは職場がストレス源だったわけですが、何とか一日を終えて帰宅しても、ストレスがほとんど減りません。
なぜなら、体は自宅にいても「今日(あるいはそれ以前)あった嫌なこと」と「明日以降に起こり得る心配事」について繰り返し考えてしまい、せっかく食事を摂ってもお風呂に入っても、全て上の空でくつろげないのです。


彼の場合にはその上、時計を見ては「出勤まであと○時間」と逆算し、ドキドキしながら時間を過ごしていました。
これでは「現在」は出勤までの間の「残り物」の時間に過ぎなくなってしまい、「現在」そのものを独立したひとときとして経験することができなくなってしまいます。
この結果、彼は夜もなかなか眠れなくなり、睡眠不足からくる疲労感と憂うつ感・不安感で、ますます事態を悪化させていました。
本来なら心身を休め、楽しみや喜びも体験できるはずの時間と空間を、わざわざ自分で針のむしろに変えてしまっているといえます。


しかしもちろん、Xさんは何とか自分の状態を良くしたいと思っておられたし、嫌なことを繰り返し考えてしまうのも、「考えずにはおれない」切迫感を感じていたからです。
何とか事態を打開したい――そのためには解決法を見つけなければ、という気持ちから、人はつい堂々巡りでも考え続けてしまうのですが、ことメンタルなことに関しては、実際には「問題解決志向」は無効なばかりか、精神状態をより悪化させてしまうことが、ここ数十年の研究でわかってきています。


それでは、どうすれば「繰り返し考えてしまうこと」から脱却し、「現在に生きる」ことができるのでしょうか?

書いた人 浜野ゆり : 2009年07月04日 07:33