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(25)「適度」なスピリチュアル生活――占いについて6:占星術は天文学にあらず

2012年12月11日

アメリカの著名な天文学者で、宇宙や惑星の神秘を科学的に、楽しく紹介し、日本でもベストセラー『コスモス』によって知られるカール・セーガン氏は、その最後の著書『カール・セーガン 悪霊と宇宙を語る』の中で様々な「超常現象」批判を行なっているのですが、占いについても何ページかの記述があります。


氏の場合はさすがにかなり事情を調べて書いていますが、それでもまだ「(本当の)占い」と「占いもどき」の区別が判然としないことによる批判がいくつかあり、ここではその点を指摘したいと思います(303ページ、項目番号は引用者)。


占星術については、説得力のある反論がいくつもあるし、いずれもほんの数行で述べることができる。
たとえば
①占星術では、「水瓶座の時代」を持ち出すときには春分点歳差を考慮するのに、星占いをするときには考慮しない。占星術は、大気による屈折作用(これによって、天体の見かけの高度が増加する)を考慮しない。
重視される天体は、二世紀のプトレマイオスも知っていたような裸眼でも見えるものばかりで、それ以降に発見されたたくさんの天体は無視する(地球に近い小惑星はどうなるんだろう?)。


まずセーガン氏の根本的誤解は(まあ、占星術と聞いてほとんどの人が誤解している点ですが)、占星術と天文学は別体系である、ということです。


占星術家、松村潔氏の、占星術入門教科書より、その辺りの説明文を取り上げると、以下のようになります。
なお、「サイン」とは通常の会話で「星座」と呼ばれるもののことと思ってください。


「今日の占星術は、バビロニア起源の関数天文学とギリシャで起こった幾何学天文学が合体したものであり、天文学者ヒッパルコスと天文学者兼数学者プトレマイオス(英語名トレミー)によって、この古典的な天文学の体系が形成されました。


太陽の通り道である黄道は、天球と地球の赤道面を交わらせた天の赤道に対して、およそ23度半傾斜しています。


黄道と天の赤道の交点を春分点、ならびに秋分点と呼ぶのですが、これらは七十二年に1度ずつの割り合いで黄道を逆方向に移動しており、その周期は二五八〇〇年。


これを『歳差運動』といい、先のヒッパルコスにより発見されました。


そのため、ヒッパルコス以後のギリシャ初の占星術では、歳差運動により春分点が黄道上を徐々にずれていく事態を考慮し、春分点を黄道座標の出発点と想定して、ここから12のサインを意図的に割り当てたのです。


その結果、特定の時期に太陽が通るサインは毎年ほぼ同じになり、季節感と結びついたサインのイメージが形作られることになりました」(『完全マスター 西洋占星術』34ページ)


「つまり、サインあるいは星座と呼ばれる西洋占星術の黄道12宮は、地球と太陽との関係性の中でつくられた、象徴的サイクルであり、天文学的な意味での太陽系の外側にある星座とは一切関係ない、ということです」(『最新占星術入門』15ページ)


例えば古典占星術では、使われる天体は太陽・水星・金星・月・火星・木星・土星の七つです。
後に天王星・海王星・冥王星が発見され、十天体となりました。
しかし間違ってはならないのは、西洋占星術はあくまでも天体を表象として使った独自の占い術であって、天文学ではないのです。

書いた人 浜野ゆり : 2012年12月11日 07:14